輸送の未来を担う電動化モビリティ
持続可能な輸送手段がますます浸透する現代において、電動化モビリティは自動車業界に変革をもたらす重要な要素となっています。電気自動車が急速に将来の移動手段として普及しつつあるのに伴い、それらを効率的にテストできるソリューションに対するニーズがこれまで以上に高まっています。なかでも、ターンキーソリューションは現状を根本的に変える手段として注目を浴びています。このブログ記事では、電動化モビリティの車載テストにおけるターンキーソリューションの重要性と、それらが電気自動車の開発および成功にどう貢献するのかについて詳しく説明します。
電動化モビリティ分野における車両テスト向けのターンキーソリューションとは、電気自動車とそれらのコンポーネントの適合性、性能、安全性、および効率性を評価できるよう特化して設計された、事前に統合済みの既製のテストプラットフォームやそれに対応するソフトウェアモデル、およびテストライブラリを指します。これらのソリューションにより、お客様はテストシステムをゼロから自前で開発することなく、総合的なテスト基盤を入手することができます。つまり、ターンキーソリューションを導入すれば、自動車産業における電気自動車のさまざまなテストを高い効率性と信頼性で行うことが可能になり、専門家の優れたサポートを受けつつ、さまざまなテストモジュールをシームレスに統合し、市場投入時間の短縮やコストの最適化を実現することができます。
すぐに使えるソリューション
このような場合に有用なのがdSPACEソリューションです。ターンキーHIL(Hardware-in-the-Loop)テストシステムで世界をリードするサプライヤである当社は、これらのソリューションを既製のテストカタログで拡張しています。電動化モビリティの開発において、スマート充電、バッテリマネージメントシステム、およびパワーHILテスト向けのこれらのソリューションがいかに貢献しているかについて、以降で詳しく説明します。
効率性、柔軟性、持続可能性を最大化:スマート充電のテスト
インテリジェント充電とも呼ばれるスマート充電とは、インテリジェントな通信および制御機能を組み込んだ電気自動車向けの高度な充電システムのことを指します。このシステムは、電気自動車の充電プロセスをインテリジェントに管理および制御することで最適なリソース使用を実現します。それにより、パワーグリッドの負担低減や、最終的には電気自動車の普及を後押しします。つまり、電気自動車の充電の効率性、柔軟性、および持続可能性を最大限に高めるには、スマート充電が鍵となります。
dSPACEでは、スマート充電コンポーネントのテストや妥当性確認向けのターンキーソリューションを提供しています。充電規格は地域によって異なるため、電気自動車メーカー各社はテストにおける複雑な課題に直面しています。dSPACEでは、それぞれのお客様のニーズに応じて、電気自動車、電気自動車給電機器、およびそれら両方の通信をシミュレートするSmart Charging Solutionを提供しています。CAN通信を管理する標準的なリアルタイムシステムに対し、Smart Charging Interface BoxではCombined Charging System(CCS)規格の電力線通信を処理します。
また、当社のスマート充電ターンキーソリューションには、ISO 15118、CHAdeMO、GB/Tなど、標準化された必須通信プロトコルで求められる新しい適合性テストがあらかじめ実装されているため、テスト対象デバイスを接続すればすぐにテストを行うことができます。
安全性、パフォーマンス、耐久性を保証:バッテリマネージメントシステムのテスト
バッテリマネージメントシステム(BMS)は、バッテリパックの安全性、性能、および寿命を保証する電気自動車の重要なコンポーネントです。充電状態の正確な評価、セルバランシングの管理、温度のモニタリング、異常に対する保護、通信の促進、および予防的な保守を可能にするBMSは、電気自動車用バッテリの効率性や信頼性を最大限に高めるうえで重要な役割を果たします。
dSPACEでは、BMSのテストや妥当性確認向けのターンキーソリューションを提供しています。このソリューションは、実績のあるBMS HILシステムとAutomotive Simulation Models(ASM)の高品質バッテリモデルで構成されており、高精度バッテリセルシミュレーションと組み合わせて使用すれば、現在だけでなく将来のBMSのテストも可能です。BMS HILシステムとASMモデルはいずれもスケーラブルなモジュール型のシステム設計を採用しているため、関連するセル監視回路の個々のトポロジを尊重しつつ、単一のBMSから複数のBMSに至るまで、さまざまなBMSテストシステムを構築することができます。また、お客様の要件に合わせて標準的な設計のシステムを柔軟に調整できるよう、全面的に統合されたシステム設計が採用されています。このシステムの中核となるのは、電圧精度が高く、大電流をサポートするセルエミュレーションボードです。また、SIL(Software-in-the-Loop)向けのセットアップも用意されているため、開発の早期の段階で妥当性確認を行うことも可能です。
dSPACEでは、あらかじめ実装された新しいテストをテストカタログとして備えたBMS HILおよびSILテストシステムを形成し、即時にテストを行えるターンキーソリューションを提供しています。これらのテストは「Everlasting」というEUの研究プロジェクトを基に作成されたものであり、個別に拡張できるオープンなフレームワークで構築されています。Everlastingプロジェクトでは、バッテリ向けのより高精度かつ標準化された監視システムやマネージメントシステムを開発および検証することで、リチウムイオンバッテリの信頼性、寿命、および安全性を向上させる技術の実現を目指しています。
性能および機能の妥当性確認と検証:パワーHILテスト
パワーHILテストシステムは、コントローラやパワーエレクトロニクスなどのインバータを実際の電圧や電流でテストする場合に使用します。これにより、電気自動車のパワーエレクトロニクスシステムの性能や機能の妥当性確認と検証を行うことができます。
dSPACE Power HILソリューションを用いると、モーターやバッテリを動的にエミュレートしたり、ハイブリットカーや電気自動車のあらゆる駆動コンポーネントを実際のエネルギーフローに基づいてシミュレートしたりできます。高電圧システム向けの高性能電子負荷モジュールを使用すれば、システムパフォーマンスを拡張することも可能です。また、電流ベースのエミュレーションにより、ハードウェアコンポーネントを切り替えたり交換したりすることなく、可変的なモーターインダクタンスをシミュレートすることもできます。
dSPACEでは、ターンキーパワーHILシステムに加え、LV123やISO 21498の各テスト仕様向けの既製のテストカタログを提供しています。
時間とコストを削減
ターンキーHILおよびSILシステムは、お客様のテストおよび妥当性確認プロジェクトに合わせて調整したうえですぐに運用することができるため、高度なターンキーソリューションの使用は市場投入時間の短縮とコストの最適化につながります。また、このソリューションでは最小限の労力でスマート充電に不可欠な通信規格との適合性検証を行ったり、ISO21498準拠のパワーHILテストや標準的なバッテリマネージメントシステムのパフォーマンステストを行ったりすることもできます。
当社では、電動化モビリティテストのあらゆるニーズに応えるワンストップサプライヤとしてお客様をサポートしたいと考えています。詳細について、ぜひお問い合わせください。
記載した規格の簡単な説明
- ISO 21498:電気推進式道路車両のシステムおよびコンポーネントの電気仕様とテスト
- LV 123:高電圧コンポーネントに対応したテストシステム
- ISO 15118:車両および充電ステーション間の道路車両用通信インターフェース
- CHAdeMO:CHAdeMOは「CHArge de MOve」(「動くためのチャージ」の意)の頭字語です。このインターフェースは日本で開発されました。DC電圧を利用して、電気自動車やプラグインハイブリッドカーのバッテリに高出力で直接充電することができます。
-
GB/T:GB/T充電規格は、GB/T 20234規格群を主とする一連の規格であり、中国で使用される電気自動車用ACおよびDC急速充電向けのものです。これらの規格は、直近では2015年に中国国家標準化管理委員会によって改定および更新されました。
著者について
Hartmut Jürgens
プロダクトマネージャ、自動運転およびソフトウェアソリューション、dSPACE GmbH
Ömer Fazil Köroglu
プロダクトマネージャ、自動運転およびソフトウェアソリューション、dSPACE GmbH